https://kasasora.hatenablog.com/entry/20100416/p1
"店長の話を聞いて、その人は働くことでよい感情を得たことがないのではないか、と思った。労働の報酬はお金や福利厚生だけではない。賃金に値する働きができることの安心感だとか、組織の中で一定の役割を果たしているという自負だとか、そういうのも対価のひとつだ。十代のアルバイトでだって手に入る。
でももし、そういう感情的な報酬を手に入れないままでずっと働いてきたら、世の中のいろいろなものが高価すぎるように思えるのではないか。あれほど苦労して、あれほどいやな思いばかりした、その数日なり数十分なりに値する商品ではないと、そう思うのではないか。それはいかばかりひどい生活だろう。なにもかもに労働に値する値うちが感じられないというのは。
でも十七の私は、その感想をうまくことばにできなかった。店長はおつかれさんと言い、私はお先に失礼しますと言った。"